病院受診すべきかどうか迷うタイミングは多々ありますね。その中でよくあるのが、「咳が止まらない」という場合です。熱もないし、身体は元気そう。でもいつまで経っても咳が治らない。。。どんな病気が考えられ、どういうときに病院受診をすべきでしょうか。今日は「咳」について解説します。
発熱のない持続する咳の原因って何?
ウイルス性上気道炎
発熱のない咳の原因のほとんどが気道の感染に伴うもので、ウイルス性上気道炎と言われます。ウイルス性上気道炎の咳は、気道に入ってくる異物、もしくは病原体を排除するためのもので、無理に抑える必要はありません。カラッとした咳から始まり、2~3日後に痰が絡むような咳となり、またカラッとした咳に改善して1~2週間で治っていきます。約半数が1週間で改善し、90%のお子さんが2週間で改善します。ですので、赤ちゃんの哺乳が良好で、元気があるのであれば心配しなくても大丈夫です。ウイルス性上気道炎はまれに繰り返して発症していることがあり、その場合は咳が長引くことがあります。
ウイルス性上気道炎を繰り返すのは、保育園に通っているお子さんや、兄弟がいるお子さんに多いですね。
咳き込み嘔吐
咳+嘔吐を認める場合は、咳き込み嘔吐であることが多いです。咳き込み嘔吐は子どもに特徴的な咳で、あまり心配はいりません。
なぜ嘔吐するほど咳をしてしまうのでしょうか。子どもは大人より1回の咳の力が弱いため咳の回数が多いためと、咳と同時に食道・胃に空気を吸い込んでしまいお腹が張ってしまうからだと言われています。お腹が張ると余計咳がでやすく、子どもたちはゲッホゲホとどんどん咳をします。
嘔吐後は胃の内容物と同時に痰も排出されるので、パパ・ママのあせりとは反して子どもは呼吸が楽になり、ケロっとしています。嘔吐直後でも消化管の問題ではありませんので、欲しがれば食べ物をあげても大丈夫です。
気道の異物混入
口の中に物を入れた後から突然咳き込み始めたり、ヒューヒュー音のする呼吸を始めた場合、気道に異物が入ってしまった可能性があります。また、3週間以上たっても咳が改善しない場合も気道異物を考えます。気道異物のお子さんの70%以上が3歳未満ですので、まだお子さんが小さい場合はなにか変なものを飲み込んでしまっていないかを念頭におきましょう。
詳しくはこちらの記事で説明しています。
副鼻腔炎
軽快する様子がない、痰の絡む咳が10日以上続く場合、副鼻腔炎も考えます。副鼻腔炎は発熱を伴わない事が多いです。副鼻腔炎とは顔の中にある「副鼻腔」と呼ばれる空洞で起きる炎症です。鼻水が出たり、喉にたれたりすることも多いです。
気管支喘息発作・喘息性気管支炎
咳とともに息をする際「ヒューヒュー」もしくは「ゼーゼー」音がする場合、気管支喘息発作や喘息性気管支炎を疑います。これらは発熱を伴わずに出現することがある疾患の一つです。
百日咳
「ケンケン」と息を吸えずに連続的に咳き込んでしまうような咳が特徴です。咳の間は息が吸えないので、だんだん顔が赤くなり、最終的には黒くなります。咳が終わるとヒューッと笛を鳴らすように息を吸います。四種混合ワクチンを接種していない場合、感染の可能性がありますので注意が必要です。また、四種混合ワクチンは3~5年で減弱し、12年で消失すると言われていますので、接種後でも感染の可能性は否定できません。ただしその場合、特徴的な咳は目立たないことがあります。夜中に咳き込んで目が覚めてしまい、起きた回数を覚えているということがあれば百日咳を疑います。
もし百日咳の場合は学校、幼稚園、保育園の出席制限があるので、診断された場合はいつまで欠席させる必要があるか確認しましょう!
クループ
「クォックォッ」というような特徴的な咳を認める場合、クループを考えます。発熱+咳+ヒューヒューと息を吸う、この3点セットが特徴です。クループは喉の奥にある「声門」と呼ばれる箇所が炎症を起こします。声門が腫れると息の通り道がせまくなり、呼吸困難になることがあるため、クループは怖い疾患です。クループの原因として、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルスが多いです。ですので、クループの症状があるお子さんで、Hibワクチン未接種の場合は注意が必要です。
受診すべき特徴的な咳は何?
咳以外、特に目立った症状がない場合は自宅で様子を見ていても大丈夫です。下記のような症状を認める場合は病院受診をしましょう!
- 息をするとき「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった音がする
- 咳が激しくてご飯が食べられていない、夜寝られていない
- 38.5度以上の発熱がみられる
- 水分補給ができず、口の中が乾いている
- 元気がなくてぐったりしている
- 呼吸が苦しそう、顔色が悪い
咳に有効な治療は何?
鼻水を吸引する
咳に対する有効な治療は、実はお薬ではありません。「鼻吸引」なのです。鼻吸引は咳症状を軽くし、咳の期間を短くすることが知られています。特に乳幼児では「咳止め」のお薬は呼吸も抑制することがあると言われており、大人で使うような咳止めのお薬はあまり処方されません。
我が家でも、電池式の鼻吸引器は大活躍です。鼻水をこまめに吸うと、吸引をサボったときより明らかに治りがよかったので驚きました。咳・鼻がひどいときには、パパにも鼻吸引をしっかりやるようお願いしています。
室内を加湿する
空気が乾燥すると、のどの粘膜が刺激を受けて咳が出やすくなります。加湿器を利用したり、なければぬれタオルを下げておくとようにしましょう。
部屋を清潔に保つ
ホコリや汚れた空気は、喉に対して刺激になってしまい、咳を助長させてしまいます。喉は病原体を含む異物を出そうとして咳を行います。特に気管支喘息の可能性がある場合は、咳の原因そのものです。部屋を清潔に保つことも咳に有効な対応です。
お薬を処方してもらう
病院で処方してもらうお薬も、もちろん効果的です。とはいえ、上記の通り咳を直接止めるような働きをする薬ではありません。小児科で処方されるのは、気道の粘液や粘膜を正常にし痰や鼻水を出しやすくするお薬です。痰や鼻水をお薬で出しやすくすることで、咳にも効果があるのですね。ただ、お薬は全員に効くものではありません。ある研究で、このお薬を使うことで発症から1週間後、14%の子どもたちに咳症状の改善を認めたとのことですので、7人に1人に効果があるということですね。
いかがでしたでしょうか。多くの場合、発熱を伴わない咳は怖いものではありません。ですが、どんな病気だと怖いのか、どんな症状だと病院受診をすべきなのか、おうちで出来ることはあるか、を知っておくことはパパ・ママとして大切ですね。
今回の主な参考文献
- 小児科ファーストタッチ 岡本光宏著
- 小児科レジデントマニュアル第3版 安次嶺馨、我那覇仁編集
- 小児の薬の選び方・使い方改訂5版 横田俊平他編集