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学童期

お腹がいたーい!よくある疾患とこわーい疾患

お腹が痛い!というのは、大人にだってよくある症状。たとえ便秘だとしても、汗かくほど痛いことだってありますよね。子どもが「お腹が痛い!」と言ったとき、よくある病気がなんなのかについて解説します!

発熱がある場合はこちらも参考に。

赤ちゃんが熱を出した!病院に行くべき?様子を見るべき?赤ちゃん、新生児・乳児が発熱したときどうしたらいいか。対処法や病院受診の目安について解説します...

最も多いのは、感染性胃腸炎、便秘症、過敏性腸症候群の3つです。それぞれどんな疾患かみていきましょう。

腹痛でよくある疾患はなんですか?

嘔吐・下痢も出現!感染性胃腸炎

ウイルス性と細菌性の2つに大別されます。
ウイルス性胃腸炎は腹痛の前に嘔吐があることが多いです。更に下痢もよく出現します。原因ウイルスは四季によって異なります。春はロタウイルス、夏はエンテロウイルス、冬はノロウイルスをまず原因に考えます。また、1年を通して疑いがあるのがアデノウイルスです。周囲の流行状況によっても感染源は異なることがあります。
細菌性胃腸炎は、加熱不十分な鶏肉、豚肉による、「カンピロバクター」と呼ばれる細菌が原因であることが多いです。口にしてから2~5日後に発症します。発熱を伴います。また、腹痛+発熱を発症してから2~4日後に血便が出ることがあります。また、加熱不十分な鶏肉、卵による「サルモネラ」と呼ばれる細菌も原因になることがあります。

ウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎は、細菌性胃腸炎のほうが症状が強いことが一般的です。加熱不十分な鶏肉・豚肉・卵には気をつけましょう!そして万が一胃腸炎となった場合は、症状が強く食欲がない間は食事は控えてお水だけ飲ませるようにしましょう。症状が和らいできたり、丸一日食事を控えた場合は消化にいいものを少量ずつ食べさせるとよいでしょう。

加熱不十分な鶏肉・豚肉・卵に注意!

意外に多い、便秘症

下痢をしている、というわけでなければたとえ朝に排便があったとしても便秘症である可能性は否定できません。便秘であれば浣腸するのがよいでしょう。浣腸した後の便をみて、もし血便であれば病院受診をしましょう。便秘症以外の疾患の可能性があります。浣腸で腹痛が改善しても、再度腹痛が出てくるようであれば病院受診しましょう。

ゆきぽん

子どもの話ではなく、私自身の話ですが、幼少時深夜にお腹が急に痛くなって母に救急外来に連れて行ったもらったことがあります。腹部のX線を撮ったところ、診断は便秘症!浣腸をしてスッキリして帰りました。

もし、排便時に毎回痛みがあったり、排便の頻度が週1~2回未満である場合、慢性便秘症の可能性があります。その場合は、長い目でしっかりフォローしてあげたほうがよいので、小児専門医を受診しましょう。

ストレスが多いとなりやすい、過敏性腸症候群

腹痛や腹部不快感が2か月以上くり返し、排便の回数が増えたり、便が下痢っぽくなる/固くなるといった変化がでます。この疾患は、腸管に明らかな炎症や腫瘍といった病気はなく、腸管の働きが問題です。ストレスと関係が深い病気としてよく知られています。
治療としてはまず、何にストレスを感じているのか、子どもの考えを理解することから始まります。お子さんが何に苦しんでいるのか、それを理解するだけでも症状が軽くなることがあります。他にも、生活や食事を整えたり、通学路や学校でのトイレへ行くことの配慮をしてもらうことでも軽快します。そこにお薬を合わせて治療をしていくのですね。

また、一旦過敏性腸症候群と診断された場合でも、夜間の腹痛、微熱、下血、嘔吐、体重減少などが出現する場合はもう一度他の病気がないか調べる必要があります。その場合も病院受診をしましょう。

病院で治療が必要な腹痛の原因はなんですか?

下記で書かれた疾患のうち、いくつかは後ほど記事化の予定です!

右下腹部痛といえば!急性虫垂炎

誰しもが聞いたことある疾患ですね!いわゆる「盲腸」です。厳密には盲腸から出ている、虫垂と呼ばれる器官の炎症になりますので、盲腸の炎症ではありません。
虫垂炎といえば、右下腹部痛!とよく言われますが、初期症状としては嘔吐や、みぞおちの痛みであることが多いです。だんだん痛みが右下に移動していきます。そのうち、歩くだけでお腹に痛みが響くようになります。発熱も、初期の段階では出ないことがあります。
虫垂炎と診断されれば、入院して点滴で抗菌薬の投与が開始されます。もし炎症が広がり、お腹全体に炎症が広がる「腹膜炎」という状態になっていれば、緊急手術も考慮されます。また、発症時は抗菌薬だけで治療し、落ち着いたタイミングで後から手術で虫垂を取る手術を行う場合もあります。

ゆきぽん

虫垂炎といえば右下腹部の痛み、というイメージがありますが、始めは嘔吐や胃のあたりの痛みのことも多いです。また、虫垂が長い子だと、虫垂自体が左の方まで伸びてて、お腹の痛みが真ん中~左に移動していくこともあります!痛みが強くなってくると、歩くとき前かがみになって、歩くと響くような痛みがあります。わたしたち小児科医は、虫垂炎疑いの子が診察室に入るときの歩き方も観察しています!

苺ゼリーみたいな便が出る!?腸重積症

腸管の一部が嵌頓(かんとん)して、隣接する腸に入り込んでしまう状態になる疾患です。

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この状態になると、だんだん腸の血流が途絶えて最終的には腐ってしまいます。強い腹痛が出ますが、10~30分毎に嵌頓状態が解除されて痛みが無くなったり出現したりを繰り返すのが特徴です。徐々に進行して腸管に血がいかなくなってくると、いちごゼリー状の血便がでたり、嘔吐が出現します。生後6~12ヶ月での出現が最も多く、6歳以上になると少なくなるとされています。腸重積症と診断された場合は造影剤をつかった整復を行います。もし緊急性が高い場合は緊急手術も考慮されます。緊急手術ではなく、整復処置ですんだとしても、1泊は入院して様子をみることになります。

スネにぽつぽつが出現!IgA血管炎

聞き慣れない病気かと思います。小型の血管に炎症が起きる疾患で、出血斑(暗褐色のあざ)、むくみ、腹痛、関節痛などがでます。早期の場合、腹痛だけが先行して出現することがあります。腹痛は強烈な痛みであることが多く、痛みでのたうち回ることもあります。IgA血管炎で特徴的なのは、おしりから足にかけて出現する出血斑です。ぽつぽつしたあざがスネにばーっと出ます。遅かれ早かれ、IgA血管炎であれば、出血斑は必ず出ます。圧迫しても色が消えないのが特徴です。また、足や膝の関節が痛んだり、血尿が出ることもあります。

ゆきぽん

IgA血管炎の腹痛は、「いたーーーーーい!!!いたいーーーー!!」と泣き叫ぶような痛みです。一方で意外と虫垂炎はじんわりくるような痛みなんですよね。

その他

他にも腹痛を呈する疾患はたくさんあります。鼠径ヘルニアの嵌頓、急性膵炎、腸回転異常症、、、枚挙にいとまがありません。

病院受診の目安はなんですか?

お腹が痛い!という子のほとんどは前回紹介したとおり、便秘症などの良性の疾患です。腹痛はありふれた症状なので、病院受診の目安が難しいですね。

突然腹痛が出現し、腹痛以外の症状が無い場合

突然発症した腹痛で、痛みが自制内であれば自宅で様子をみてみましょう。自制できない、強い痛みであれば病院受診をしましょう。突然発症の強い痛みでも、病院に向かって移動中に痛みが緩和されることもよくあります。が、突然発症した強い痛みの腹痛のなかには怖い病気もありますので、心配であれば病院受診しましょう。

腹痛以外の症状も出現している場合

血便が出ていたら、病院受診をしましょう!
発熱や下痢、嘔吐が出ている場合は判断が難しいところです。胃腸炎の可能性もあれば虫垂炎の可能性もあるからです。胃腸炎は数日でおさまりますが、虫垂炎の場合は抗菌薬を使わないと改善しないので、状態が徐々に悪くなる、歩いたらお腹に痛みが響く、だんだん右下腹部が痛くなってきた、といった症状が出るようであれば病院受診をしましょう。

腹痛が数週間続いている場合

この場合も病院受診をしましょう。腹痛が出るのが朝のみ、という場合も一度病院受診することをおすすめします。慢性的に腹痛が続いている場合もたくさんの疾患が考えられます。腸が炎症を起こしていたり、自律神経のバランスが崩れていたり、過敏性腸症候群になっていたり。数週間腹痛が続いているのは、子どもにとってはなかなかしんどい状態です。原因の検索、対応法を一緒に考えてもらいましょう。

さて、今回はよくある腹痛を呈する疾患、緊急性の高い腹痛を呈する疾患、腹痛が出たときの病院受診の目安についてお話しました。腹痛はよくある症状です。パパ・ママとして、どんなことに気をつけていたらいいのかを頭の片隅においておくとよいですね。

今回の主な参考文献

  • 小児科ファーストタッチ 岡本光宏著
  • 小児科レジデントマニュアル第3版 安次嶺馨、我那覇仁編集
  • 小児の薬の選び方・使い方改訂5版 横田俊平他編集