「アレルギー」という言葉を聞いたことがないパパ・ママはあまりいないでしょう。ただ、そのせいかアレルギーという疾患ほどいろんな意味がひとり歩きしてしまっている疾患は無いかもしれません。「好き嫌いのことでしょ?」「痒くなるやつでしょ?」「アトピーのことでしょ」「花粉症のことですね?」「いやいや、アレルギーって下手したら命に関わるんだよ。」
アレルギーとは一体何なのか、もし子どもがアレルギーだったらどうしたらいいのか、完全解説します!
どんなメカニズムですか
アレルギーとは何なのか。一言でいうと、免疫が過剰反応している状態のことです。
生物に備わっている「免疫」は、疫(=病)から免(まぬが)れるという言葉の意味の通り、体外の有害な異物から身体を防御してくれる素晴らしいシステムです。免疫力が落ちると、人はあっという間に感染症によって重篤な状態になりうるのです。しかし、ある特定の物質に対して、悪影響を及ぼさない物にも関わらず「有害だー!」と免疫が過剰反応してしまうことがあります。そういった反応を総称して「アレルギー」といい、原因物質を「アレルゲン」と言います。
アレルギーにはあまり気にならない程度のもの、生活に困るレベルのもの、命に関わるものなど様々な症状があります。アレルギー状態を引き起こす原因物質や症状によって様々な種類があるのです。
ちなみにわたしはハウスダストとダニアレルギーです。
大掃除をしたり、ほこりっぽいところにいくと「ほこり」や「ダニの死骸」に免疫が過剰反応し、くしゃみを引き起こすことで異物を身体から出そうとしてしまいます。
どんな種類がありますか
アレルギーはたくさんの種類がありますが、今回は子どもに多いものに限定してご紹介します。
即時型食物アレルギー
アレルギーで最も多いのが、この即時型食物アレルギーです。いわゆる「卵アレルギー」とか「そばアレルギー」とか言われるのはこの種類ですね。
乳幼児期(0~6歳)では「卵」「牛乳」「小麦」がアレルゲンとなることが多いです。学童期(7歳~12歳)では「エビ」「魚」で多く見られます。
皮膚症状が出現することが多く、診断には「食物負荷試験」と呼ばれる検査が行われます。即時型食物アレルギーに関しては、また別途記事化の予定です!
新生児・乳幼児消化管アレルギー
新生児・乳児で嘔吐や下痢を繰り返したり、血便が出たりすることがあります。新生児・乳児はそもそも便は軟便ですし、嘔吐が多い子もいますのでパパ・ママとしては見分けるのが難しいと思います。おかしいと思う基準は、きちんと体重増加しているかどうか!嘔吐、下痢、血便があり体重増加不良の場合にはこの疾患を考えます。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は多くのパパ・ママが心配する疾患です。頭・顔・体・両手足の関節に左右対称で湿疹がでます。乳児では2ヶ月以上、1歳以上で6ヶ月以上続くとアトピー性皮膚炎と言われます。アトピー性皮膚炎はアレルギー的な側面と、非アレルギー的な側面両方を持っています。皮膚の治療、スキンケアに加えてアレルゲンとの接触をいかに減らすかがアトピー性皮膚炎の治療となります。アトピー性皮膚炎もまた別途記事化の予定です!
気管支喘息
気管支喘息とは、気道の慢性アレルギー性炎症で生じます。そのため、アレルギー反応として気道が過敏になり、さまざまな誘発・増悪因子によって喘息症状を引き起こします。炎症が出るほど、気道の細胞がどんどん変性していき、さらに気道は過敏になっていってしまいます。パパ・ママが子供の頃と治療法が少し変わってきているので、もし診断されたら治療法をしっかり確認しましょう!こちらも別途記事化の予定です。
どんな症状がありますか
皮膚症状(かゆみ、じんましん、赤みなど)
食べ物がアレルゲンの場合で最も多くみられます。アレルギーといったら痒み、発赤、じんましんと思っている人もおおいでしょう
粘膜症状(目の充血・かゆみ、鼻水・くしゃみ、口腔内のイガイガ・腫れた感じ)
花粉がアレルゲンとなっている場合によく見られますが、口腔内のイガイガした感じや腫れた感じは食べ物が原因の際によくみられます。
呼吸器症状(ヒューヒューとした息、咳、喉がしめつけられる感じ)
喘息の場合に多く見られます。食物がアレルゲンの場合でも時折みられます。また、後述しますがアナフィラキシー状態のときによく合併します。
消化器症状(腹痛、嘔き気・嘔吐、下痢、血便)
アレルギーで腹痛?と思うかもしれませんが、乳幼児消化管アレルギーでよく見られます。
アナフィラキシー(全身症状、複数部位での症状)
「アナフィラキシーショック」という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。アナフィラキシーとは、アレルゲンを接種した後、数分~数時間で複数のアレルギー症状、もしくは血圧低下を認めることを言います。具体的にはどのような状態でしょうか。
- 全身にじんましんが出て、さらに息切れがする
- 唇や舌が腫れて、さらに呼吸困難になる
- アレルゲンを接種して数10分で、目の前が暗くなったり立っていられなくなるなど
このように、皮膚症状+呼吸器症状や、粘膜症状+呼吸器症状のように、複数の症状がでることをアナフィラキシーといいます。
では、アナフィラキシー”ショック”とは何のことでしょうか。アナフィラキシーの中でも血圧低下や意識レベルの低下、失神を伴うなど、生命の危機を及ぼすような症状が出現した場合をアナフィラキシーショックといい、1割くらいの方にみられます。
ショック状態ではなくても、アナフィラキシー症状が出たと思ったらすぐに救急車を呼びましょう!また、過去にアナフィラキシー状態になった方は
エピペンと呼ばれる特効薬を所持している場合があります。本人が使える状態にない場合、エピペンの使用を手伝ってあげましょう。
どんなとき病院受診をしたらいいですか?
新生児~乳児がミルクを飲んだ後嘔吐・下痢・血便がある場合
赤ちゃんの嘔吐、下痢はよくありますが血便を認めた場合は医療機関を受診するとよいでしょう。体重増加が不良の場合、消化管アレルギーの可能性があります。トマトなど赤いものを大量に食べたあとでしたら様子をみてもいいです。ぐったりしているようであればすぐに受診しましょう。
食後30分以内にじんましんが出た場合
食後30分以内にじんましんがでたり顔が腫れたりするときには、まず医療機関を受診しましょう。即時型食物アレルギーを疑います。離乳食を始めるころは何がアレルゲンになるかわからないので、新しい食材は病院の開いている平日昼間に食べさせると良いでしょう。ぐったりしている、呼吸が苦しそう、下痢や嘔吐を繰り返す、意識状態が悪い場合は、大至急受診してください!食物アレルギーの原因とわかった食品は、医師の指示のもとで食べさせます
清潔にしていても、痒みの強い湿疹が良くならない場合
かゆみの強い湿疹はアトピー性皮膚炎を疑います。湿疹部を清潔にして1週間たってもよくならない場合は受診しましょう。アトピー性皮膚炎と診断されたら、医師の指示に従って処方薬をきちんと使いましょう。
息を吸うと、のどや肋骨の間がはっきりへこむ、苦しくて話せない、眠れない場合
喉や肋骨が凹むような息をするとき、苦しくて話せないとき、咳で眠れないとき、これらは喘息発作の症状です。医療機関を受診しましょう。症状の程度に応じて医師の判断のもと、発作のコントロールを行います。発作が起きていないときも薬を使用し、気道の腫れを治療することもあります。
アナフィラキシー症状が出た場合
上記でも説明しましたが、じんましん+呼吸困難、口の中が腫れる+息がヒューヒュー音がする、ふらつく(血圧低下)といった複数の症状や血圧の低下と思われる症状が出たら、すぐに救急車を呼びましょう!
アレルギー性疾患は非常にたくさんあります。今回は赤ちゃん~幼児に多いものに限定しました。食べ物にせよ、喘息にせよ、アレルギー性疾患と診断されると、お子さんと一緒にパパ・ママは少し長い戦いが必要になります。今までは気にしていなかったアレルゲンを除去していかねばならないからです。どんな風にアレルゲンを除去していったらいいのか、症状が強いときにはどうしたらいいのか。小児科医はたくさんのお子さんを見ているのでそのやり方もサポートできます。あれ?と思ったら病院にかかって相談してみてくださいね。
成長にしたがってアレルギー素因が弱くなったり、お子さん自身も自分の体を学ぶことでパパ・ママの負担は少しずつ減っていくことが多いです。ちょっと長距離マラソンになりますが、二人三脚でがんばりましょう。
今回の主な参考文献
- 小児科レジデントマニュアル第3版 安次嶺馨、我那覇仁編集
- 小児科ファーストタッチ 岡本光宏著
- 独立行政法人 環境再生保全機構