かわいい我が子が誕生して、ママと一緒に退院する日を心待ちにしているパパ・ママ。そんなある日、「黄疸」があるので、治療をしましょうと言われたらびっくりしますね。また、1ヶ月検診で「黄疸」がありますと指摘されることもあります。黄疸といえば肝臓の病気?うちの子は肝臓が悪いの??
実は意外と多い「黄疸」の赤ちゃん。今回は黄疸について解説します。
黄疸てどういう体の仕組みで起きるの?
体や、眼球が黄色く染まる黄疸。黄疸はどういう仕組で起きているのでしょうか。
一言でいうと、血液中の「ビリルビン」という物質が増えると「黄疸」が生じます。では「ビリルビン」とはなんでしょうか?ビリルビンとは、寿命の尽きた赤血球から生じる物質で、血管の中に存在します。ビリルビンは肝臓で少し変形して胆管に排出されます。その後は胆汁に混ざって腸内に出ていき、糞便中に排泄されます。
つまり、黄疸が生じる原因として、
- たくさんの赤血球が寿命となり、ビリルビン量が増える
- 肝臓の機能が低下して、胆管に排出できない
- 胆管が詰まっていて、胆汁・腸内に排出できない
- 腸内にあるビリルビンを腸が再吸収する
という4つが主に考えられます。確かに、肝臓の病気で黄疸が出ることはあるのですが肝臓以外が原因のこともあるのですね。
赤ちゃんの黄疸の原因にはどういう病気があるの?
赤ちゃんの黄疸は発症時期によってその原因は異なります。ですがそのほとんどが、病気からくるものではなく新生児特有の体の特徴のために起こるのです。
生後2~5日に生じた黄疸
この時期の黄疸で最も多いのは「生理的黄疸」と呼ばれるものです。実は、生まれたての赤ちゃんは元々黄疸が出やすい仕組みになっています。というのも、生まれたての赤ちゃんは大人よりも赤血球の数が多く、赤血球の寿命も大人より短いからです。また、赤ちゃんの肝臓はまだ機能が未熟で、ビリルビンを効率よく胆管に排泄することが出来ないのも理由の一つです。
また、まれにママと血液型が違うために起こる「新生児溶血性黄疸」のこともあります。ママが自分の体を異なる血液型から守るために作った抗体と言われるものが、赤ちゃんの血液を攻撃し、赤血球を大量に壊してしまうのです。特にRh血液型が異なる場合に生じることが多いです。この黄疸の場合は黄疸が強く、貧血になることがあります。
生後数日~生後1週間に生じた黄疸
まだ母乳がうまく出ていない場合など、哺乳量が足りていない新生児に認められます。このように生じる黄疸を「母乳哺育黄疸」と言います。哺乳量が少ないため、排便が少なく、腸内に排出したはずのビリルビンを再び体内に取り込んでしまうために発生します。
生後1週間~数ヶ月に生じた黄疸
母乳中の物質で、肝臓から体外へのビリルビン排出を妨げるものがあります。完全母乳に多く見られる黄疸です。「母乳性黄疸」と言います。
2週間以上続く黄疸
上記でご紹介した黄疸は、数日で消失する、もしくは治療によって消失することが多いものです。ですが黄疸の中には2週間以上続いたり、一度消失したものがすぐに再発するといったものがあります。そういうときは「胆道閉鎖症」を疑います。先天的に胆道が閉塞しているため、ビリルビンが胆汁内・腸内に排泄できずに溜まってしまうのです。もしこの疾患だった場合は便の色が白くなるため、便の色も手がかりになります。
黄疸になると、何がこわいの?
これまで、黄疸の仕組みやその原因についてお話してきましたが、なぜ黄疸を恐れるのでしょうか。肌が黄色くなるだけなら、みかんを食べたって黄色くなります。そんなに恐れる必要があるのでしょうか。
実は黄疸は脳に影響を与えることがあるのです。
多量のビリルビンは脳に沈着することで神経障害を生じることが知られています。これを「ビリルビン脳症」もしくは「核黄疸」と言います。ビリルビン脳症が進行すると脳性麻痺、聴覚障害、歯の異形成、知的障害などが認められます。
黄疸の治療には何をするの?
進行した黄疸は恐ろしいですね。ですが、きちんと治療することでビリルビン量をへらすことができるので、現在ビリルビン脳症を呈する子はほぼいません。では、どのような治療をするのでしょうか。
光(線)療法
光を利用してビリルビンを水に溶けやすい物質に形を変え、迅速に排出出来るようにするのが光療法(光線療法)です。24時間、ベッドから光を当て、24時間後にビリルビン値を計測し、下がっていたら終了です。下がりきっていなかったら更に24時間追加します。黄疸が強い場合は多方向で追加照射します。24時間あてますが、哺乳の時間は中断して哺乳して大丈夫です。
基準値以上の黄疸を認めた子のほとんどが、この光線療法を実施を実施します。そして多くの場合24時間で終了となります。
©小児科医ゆきぽん
写真は、うちの子が生後5日で基準値以上の黄疸を認めたため光線療法したときのものです。
ベッドの下から体全体に照射します。赤ちゃんにはなんの痛みもないのがいいですね。
交換輸血
光線療法のみでビリルビン量が下がりきらない場合に考慮される治療法です。点滴を動脈と静脈からとり、動脈からは血液を排出し、静脈からは輸血を実施することで赤ちゃんの85%くらいの血液を交換します。輸血は副作用も多く、交換輸血をすべきかどうかは医師が日齢別のビリルビン値を見ながら検討します。
さて、今回は新生児によく見られる「黄疸」について解説しました。実は新生児黄疸はアジア人に多いと言われていてめずらしくないのです。黄疸が出現した子には適切な治療を行うことで後遺症無く退院できますので、ご安心くださいね。
うちの子は生まれた時はピンクだったのに、だんだんと黄色くなっていきました。母乳の出があまり良くなく、粉ミルクを飲ませていましたが、、、黄疸は出る時は出るのですね。
24時間では下がりきらず、48時間光療法を行わねばならなかったので、一緒に退院できず寂しい気持ちになったのを覚えています。でも黄疸の後遺症を考えたら、しっかり治療をしてもらえてよかったと思っていますよ!
今回の主な参考文献
- 小児科レジデントマニュアル第3版 安次嶺馨、我那覇仁編集
- 時間経過でみるNICU第5版 西巻滋責任編集
- 早産児ビリルビン脳症(核黄疸)診療の手引き 「早産児核黄疸の包括的診療ガイドラインの作成」班