パパ・ママが子どものころ、クラスに1人は喘息の子がいたのではないでしょうか。もしくは小さい時喘息だったパパ・ママもいるかもしれません。それくらい、耳馴染みのある疾患ですが、もし自分の子が喘息かもしれないと言われたら。喘息かも?と思ったら。喘息てどんな疾患なのか、どんなことに気をつけないといけないか、どんな治療法があるのか、学校や保育園生活ではどうすればいいのか、喘息にまつわる様々な疑問にについて解説します!
どんな機序で起きる病気ですか
意外に思われるかもしれませんが、実は気管支喘息はアレルギーの一種なのです。気管支の粘膜がアレルゲンに触れることで慢性的に炎症を起こし、徐々に気道はちょっとした刺激に過敏になっていきます。するとちょっとの刺激で粘膜が浮腫んでしまい気道が細くなって呼吸が苦しくなる発作を繰り返します。
喘息発作自体は、実は氷山の一角なのです。
この病気の本質は、ちょっとした刺激で過敏になる「気道過敏症」なのです。喘息=息ができなくなる発作、と考えている方が多いのですが、実は非発作時も炎症は生じています。気道が過敏になり、普通の人なら何でも無いホコリやタバコの煙などの刺激で気道粘膜に炎症が生じているのです。
ずーっと炎症が生じ続けるとどうなるのでしょう?一時的に粘膜が浮腫んでいただけでなく、粘膜細胞が固く太く生まれ変わります。こうなると元の気道粘膜には戻りません。これを気道のリモデリングといいます。リモデリングされて固く太くなったん巻く細胞は、さらに気道を過敏にします。
気道過敏症→ちょっとの刺激で炎症→リモデリング→さらに気道過敏症が悪化、、、これを繰り返し、最終的になにかにはずみで喘息発作を生じさせるほど気道が細くなります。
どんな症状が出ますか
喘息発作は、その症状の強さに応じて大きく4つに分類されます。それぞれ、「息の音」「身体を動かせるか」「会話が出来るか」「横になれるか」で見分けることが出来ます。それぞれ見ていきましょう。
小発作
- 息を吐くときヒューヒュー、ゼーゼーと聞こえることがある
- 急ぐと苦しいが、歩ける
- 会話はほぼ普通にできる
- 苦しいが横になれる
中発作
- 息を吐くときヒューヒュー、ゼーゼーと明らかに聞こえる
- かろうじて歩ける
- 会話はやや困難(一句ごとしか喋られない)
- 苦しくて横になれず、座りたがる
大発作
- 息を吐くときヒューヒュー、ゼーゼーという音が強い
- 歩行できない
- 会話はほぼ難しい(単語ごとしか喋られない)
- 苦しくて横になれず、前かがみになる
重積発作
- 呼吸音がしない
- 身体を全く動かせない
- 会話は出来ない
- 他にも明らかに異常な状態を認める(チアノーゼが出ている、意識がない、呼吸できていないなど)
どういうとき病院受診をしたらいいですか
「喘息」と診断されていないお子さんの場合
これまでに喘息と診断されていないお子さんの場合は、こちらの記事を参考にしてください。
- 咳がひどく、息をするときヒューヒュー、ゼーゼーと音がする
- 咳がはげしくてご飯た食べられていない、夜寝られていない
- 上記で書かれた喘息発作の症状と思われる症状が出ている
こういう場合は病院受診をしましょう。
「喘息」と診断されている場合
発作かな?と思ったら気管支拡張薬を吸入もしくは内服しましょう!
その上で下記の症状がある場合は救急外来を受診しましょう。
- 苦しくて眠れない
- 気管支拡張薬の吸入/内服後15~30分経っても症状が変わらない/悪化している
- 気管支拡張薬が手元にない
- 強いぜん息発作のサインがある(以下の表を参照)
生活の様子 | 全身の様子 | 呼吸・脈の様子 |
遊べない、歩けない、話せない | 顔色が悪い(爪の色や唇の色が悪い) | 遠くからでもゼーゼーがわかる |
食事がほとんど取れない | ぼーっとしている/興奮して暴れている | 息を吸うと、肋骨の間や喉がへこむ |
横になれない、眠れない | 脈が早い |
これの表は強い喘息発作のサインです。一つでも認めたら病院受診をしましょう。救急車を呼んでも構いません。
引き続き、喘息について解説していきます!
喘息がどんな病気かに関してはこちらをご参照ください。
今回は、喘息と診断された後、どんな治療をしていくのかについてお話していきます。
どんな治療薬を使いますか
喘息の治療では、大きく2種類の薬が使われます。発作を予防する薬(長期管理薬)と発作を止める薬(発作治療薬)の2つです。それぞれ解説していきます。
炎症を抑えて発作を予防する薬(長期管理薬)
気道の慢性的な炎症を抑える薬です。慢性的な炎症が持続することにより、気道過敏性がどんどん進行しやがて発作を起こします。ですので、炎症を常に抑え続けることが喘息治療のメインになります。たとえ症状がなくても毎日吸入/内服し続けることが大切です。自己判断での休薬はやめましょう!
具体的には吸入ステロイド薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬がよく使われます。
ステロイドは炎症を抑える効果のある薬です。それを吸入することで直接気道に届けて炎症を抑えます。
また、ロイコトリエンという物質はアレルギー反応によって気管支を収縮させる作用があります。ロイコトリエン受容体拮抗薬は、ロイコトリエンの作用を邪魔するのでアレルギー反応による気管支の収縮を予防する効果があるのです。
気道を広げて発作を止める薬(発作治療薬)
具体的にはβ2刺激薬という薬を用いた短時間作用性気管支拡張薬が使われます。β2刺激薬は気管支を広げる作用があります。飲み薬もありますが、即効性があるため吸入薬を使うことが多いです。
気管支を広げる効果はありますが、炎症を抑える効果はありませんので、あくまで発作時のみに使用する薬になります。普段は上記にあるような、炎症を抑える長期管理薬を使用しましょう。
自宅では何に気をつけたらいいですか
繰り返しお伝えしているように、喘息という病気は普段から気道の炎症をいかに抑えるかが大切です。そのためには毎日の吸入、内服を継続することが大切ですがそれ以上にお家の環境を整えることも大切です。どのようにお家を整える必要があるのかをお伝えします。
絶対に避けるべきこと
タバコの煙は喘息発作の原因となるだけでなく、喘息治療薬の効果も弱めることがわかっています。絶対にやめましょう!お子さんが喫煙することはもってのほかですが、受動喫煙も同様です。また、家の外で吸うようにしていますという方がたまにいらっしゃいますが、服に煙がついてしまうため吸わない家族からもタバコの煙の成分が検出されるそうです。喘息と診断されたお子さんがいたら、お子さんのために是非とも禁煙しましょう。
また、花火や線香の煙も喘息を悪化させます。キャンプファイヤーや花火をする際は風上にいるようにし、口元をタオルで覆うなど工夫をしましょう。
部屋作りのポイント
部屋づくりで大切なことは、ダニの生息場所をなくす/発生したダニを掃除しやすい状態にすることです。具体的には以下のポイントが大切になります。
あらえない布製品を置かない
- ソファは布製にしない
- じゅうたん/カーペットを撤去する
- ぬいぐるみの数を減らす
布製品はこまめに洗濯する
- ぬいぐるみはこまめに洗濯する
- カーテンも定期的に洗濯する
ダニの生息場所をなくす
- エアコンの清掃を定期的にする(フィルターだけでなく、中全体を!)
- 家具は壁から離す
- 棚やチェストは扉付きのものにする
- 照明器具を裾付き型にする
寝具のお手入れの仕方
毎日眠る場所である寝具の管理も大切です。基本は洗濯&乾燥です。
こまめに洗濯・掃除する
- 1~2週間に1回は寝具に掃除機をかける(布団専用掃除機がよいでしょう)
- シーツ類・カバー類をこまめに丸洗いで洗濯する
乾燥させる
- 天日干し・布団乾燥機で乾燥させる
ペットを飼っている場合の対応法
大切な家族の一員であるペット。常にペットと一緒に生活しているため、飼育開始時はアレルギーなどなかったとしても、どうしても飼育している間にペットアレルギーとなってしまうことがあります。そのため、喘息と診断されたお子さんがいるお家であらたにペットを飼うことはおすすめできません。
とはいえ、もうすでにペットを飼っている場合、家族の一員であるその子と一緒に生活していく必要があります。部屋を分ける、屋外で飼うなど生活の場を分けたり、定期的にペットにシャンプー/トリミングしたり、上記にある部屋の清掃・寝具の管理の頻度をあげたりすることで対応しましょう。
以上ペットとの共存方法についてお伝えしましたが、そこまで対策しても発作を繰り返すなど、症状が改善されない場合は命に関わります。その場合は、辛い決断だとは思いますが、新たな家族を探すという選択肢を考えてください。
わたしも猫を飼っていましたが、飼育するにつれてアレルギー症状が出るようになりました。毎日クイックルワイパーをしたり、カーペット専用掃除機でこまめにカーペットに掃除機をかけたり、こまめに猫にブラッシングして毛量を減らしたりすることで、症状がなるべく出ないように心がけていました。ちょっとサボるとアレルギー症状が強くでるので、やはり日々の清掃が大切なのだとわかりました。
学校・保育園で注意すべきことはなんですか
学校や保育園で発作が起こりやすいのは、ホコリのたつ掃除の時間や、体育や休憩時間などの運動中です。また、修学旅行や宿泊施設のお泊りなど普段と異なる場所での寝食でも発作が起こりやすいとされています。
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
掃除の時間の対応法
掃除の時間はどうしてもホコリが立ちやすく、ホコリが喘息悪化/発作の原因となります。マスクをすることでホコリを吸い込むことを予防しましょう。また、チョークの粉も喘息を悪化させる原因となりますので、掃除の係ではなるべく避けましょう。
運動誘発喘息の対応法
運動することで咳や喘鳴(ゼーゼーした呼吸)が出たり、息苦しさなどの症状が出ることがあります。これらを「運動誘発喘息」といいます。とはいえ、身体を動かして遊んだり、運動したりすることは心身の発達に大切なことです。発作を恐れて運動を控えてしまうことで体力が落ちたり、肥満になったりするとそれも喘息悪化の一因となってしまいます。
運動誘発性喘息が起こりやすい人は、普段の予防が不十分である可能性があります。かかりつけ医にそのことを伝えて、お薬を調整してもらいましょう。
また、運動時に発作が起きないようにするためには準備運動をしっかりすることです!冬場は乾燥しており砂やホコリを吸いやすいので、少々息苦しいかもしれませんがマスクをしてもよいでしょう。また、運動する少し前に発作用の気管支拡張薬を吸入することも発作予防に有効です。
発作を起こしてなくても吸入していいの?と思うかもしれませんが、発作を起こしてしまうことのほうが気道には悪影響ですので、構いませんよ。
修学旅行などの宿泊行事の対応法
いつもと異なる場所での寝食が原因で発作を引き起こすことがあります。そのため、学校/保育園の先生、保護者、医師と連携をとって事前にしっかり準備をし、してはいけないことをお子さんにしっかり伝えることが大切です。
事前準備
- 発作時用の気管支拡張薬を必ず処方してもらう
- 発作時の対応についてのメモを準備する
お子さんに伝えるべき「してはいけないこと」
- 寝具の上で飛び跳ねたり、枕投げはしない
- キャンプファイヤーや花火の際は風上にいる、マスクをするなど
宿泊行事の際はかかりつけ医に相談してどういう準備が必要かを確認し、それを学校/保育園の先生とお子さん本人に周知することが大切なのです。
学校/保育園で喘息発作が起きた時どうしたらいいですか
喘息発作が出現した際、強い喘息発作のサインが出ていればすぐに救急車を手配してもらいます。そして救急車が車での間に気管支拡張薬を吸入させてもらいます。
幼児・学童児
- 歩いたり、遊んだりできない
- 喋れない
- 給食/お弁当が食べられない
- 顔色が悪い
- ぼーっとしている/興奮している
- 息をすると強くヒューヒュー、ゼーゼーと聞こえる
- 肋骨の間がはっきりへこんでいる
赤ちゃん
- 母乳/ミルクが飲めない
- 咳き込んで眠れない
- 顔色が悪い
- 機嫌が悪い/興奮して泣き叫ぶ
- 激しく咳き込んでいる
- 呼吸が速い
- 息をすると強くヒューヒュー、ゼーゼーと聞こえる
- 肋骨の間がはっきりへこんでいる
強い喘息発作のサインが出ていなくても、喘息発作が生じた場合は保健室に移動させてもらいましょう。そして速やかに気管支拡張薬を吸入させてもらいます。薬を使った時刻を記録し、15分~30分後にもう一度症状を確認してもらいましょう。
症状が治まれば教室に戻っても構いません。症状が残っていたり、悪化しているようであれば保護者に連絡してもらい、医療機関を受診しましょう。
学校や保育園生活を送る上でどんな準備をしたらいいですか
生活管理指導表というものをご存知でしょうか。いろんな疾患を持つ子どもに対して、どんな留意点があるか、どんな状態で、どんな治療をしているかを記したものです。学校/保育園が用紙を持っていますので、面談などお話が出来るタイミングで指導標をもらいましょう。そして医師に相談し、記入をお願いします。記入してもらった生活管理指導表を元に、学校/保育園の先生と具体的な注意点や気になる点、対応方法などを決めます。入学/入園後になにかあった場合は再度相談する機会を設けるようにしましょう。
病状が変わった場合はもちろん、保育園の場合は何もなくても1年に1回は見直すようにしましょう。幼児は成長が著しいため、1年で状態が変わります!
保育園児に関しては「保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表」、学童児に関しては「学校生活管理指導表」を使いましょう。
喘息に関して3回にわけて説明してきました。まだまだお伝え足りないことはありますが、どんな病気で、どんな治療が必要で、普段の生活では何に気をつければいいのかはだいぶ伝わったのではないでしょうか。パパ・ママ、お子さんの二人三脚で健康な生活を維持できるようにがんばっていきましょう!
今回の主な参考文献
- 独立行政法人 環境再生保全機構
- 月刊薬事 小児疾患の薬物治療ガイドライン総まとめ 五十嵐隆編集代表
- 小児の薬の選び方・使い方改訂5版 横田俊平他編集